随分間が空いてしまいましたが、サブ・ウーファーを追加した
WoodWill版HS-500はとても良くなりました。
特にクラシック音楽の再生にサブ・ウーファーの有り、無しは大きく影響します。
さて、アルテック A5ですが、スーパーツィーターを加え、高域の表現力には繊細さも加わりましたが、低域は40Hz位までが限界で後はだら下がりです。
クラシック音楽の空気感を再現できるようにするにはもっと下まで伸ばす必要があります。
そこで、WoodWill版HS-500用に購入したYAMAHA NS-SW500というサブ・ウーファーを共有することにしました。
サイズも写真のようにピッタリなので、WoodWill版HS-500のスピーカースタンドとしても使用しています。
僅か、25cmのスピーカーですがレベルを上げるとヤマハ独自のA-YST II方式で音としてではなく部屋の振動として超低域がしっかりと再生されていることに気付きます。
NS-SW500にはハイカットが内蔵され40Hz~140Hzを連続可変出来ますが、受け持ち帯域は40Hz以下としてDriveRack4800を組み合わせ上手く繫がりました。
アルテック A5は、最新の技術を駆使し、新素材を使って作られた現代のスピーカーから見ると何とも古ぼけたスピーカーに見えてしまうと思いますが、益々好きになってきました。
昨年の暮れになりますが、レーザーターンテーブルのアップグレードの件で拙宅にお越し頂いた I さんがお使いのスピーカーが タンノイ ヨーク・ミンスターでした。
部屋の関係で、非常に残響が多く音がこもっていてスッキリせず、ご自身の好みの音に出来るまでかなり苦労され10年かかってようやく好みの音が出せるようになって来たと仰っていました。
私自身も以前4種類のタンノイを使っていましたのでタンノイが持つ素晴らしさを実体験して知っていますが、上手く鳴らしたときの弦楽器や木管楽器の美しさは格別です。
しかし、いきなりそんな音が出るわけでは無くイメージより硬質な音調なので、柔らかく解きほぐすのには苦労すると思います。
そんなタンノイでクラシックを聴いていらっしゃる方の客観的な感想はとても重要で参考になりました。
アルテック A5を聴かれた後の I さんの第一声は、「これアルテックですか ?」でした。
驚かれたようで、曲の再生途中でソファーから立たれてアルテックの近くまで耳を近づけていました。
イメージしていたアルテックとは180度違う音だったようです。
まずは音が柔らかくて驚かれたようで、お使いのヨーク・ミンスターより優しい音がするそうで、クラシックを聴いても違和感は全くなく、全体的にはむしろ A5の方がクラシックが上手く鳴っていると仰って頂きました。
参考
お聴き頂いたレコードは器楽曲や室内楽がお好きとの事で下記が中心となりました。
お褒めの言葉としても嬉しかったです。
やはりサブ・ウーファーの追加による効果は大きく、音全体が柔らかくなりました。
また、大きな効果が出るのはクラシックの方が多く、大ホールでの録音はよりゆったりと聴くことができます。
元々、大編成のオーケストラは鳴りっぷりの良さが吉と出て鳴ってくれますが、器楽曲や室内楽では粗が出やすく難しいソースでした。
サブ・ウーファーの追加は、正解でアルテックでクラシックが聴けるようになって来ました。
アンプの交換などによりクラシックを聴いてもかなり満足できるようになりましたが、A5の他に以前から愛用しているLo-D HS-500の低域を充実させてみたくなりました。
A5よりも付き合いがずっと長い分、殆ど満足のいく音を出してくれるようになりクラシックからジャズ、ポピュラーまで何でも無難に熟してくれます。
オリジナルのHS-500では十分な真価を発揮できませんでしたが、ネットワークを止めマルチにし、エンクロージャーをウッドウィルに依頼して作ってもらってからは40年前のスピーカーという歳月を全く感じさせず、遊びに来ていただいたオーディオ仲間も驚くほどの鳴りっぷりに変身しました。
音質的には何の不満もありませんが、低域の量感はにはちょっと寂しさが残ります。
まあそれは口径20cmのウーファーに望んでも酷というものです。
そこで、HS-500の低域を伸ばすためサブウーファーを追加することにしました。
それまではHS-500本来の2Wayに、高域の味付けにとスーパーツィーターの4PI PLUS.2をLuxmanのAS-55で切替えて A5と共用していました。
(エンクロージャーはウッドウィルにて制作)
HS-500とサブウーファーを上手く繋ぐためにはサブウーファーに内蔵されたもので役不足でどうしてもチャンネルデバイダーが欲しくなります。
音質的にも満足していたDriveRack 260ですが、これには出力が3ch × 2しかなく3Wayまでの対応しか出来ず、4Wayに対応出来るものが必要となりました。
4Wayに対応できるチャンネルデバイダーは少ないため迷わず同じdbxの DriveRack 4800にしました。
本体の高さは2倍になりましたが、DriveRack 260に比べかなりゴチャゴチャンしています。
内蔵のカラー液晶画面を見ながら、一つのボタンを数回押したりしてモードを変更するのですが、不器用な私には不向きで Windows PCを使って操作することにしました。
dbxのホームページよりSystem ArchitectというソフトをDLして使いますが、拙宅のPCは私の好みからMacばかりで、唯一のWindows PCは古いVAIOのノートでしかもOSはXPです。
快適ではありませんが、何とかPC上からDriveRack4800をコントロール出来るようになりました。
今まで、チャンネルデバイダーという言い方で済ませてきましたが、dbxではDriveRackシリーズをスピーカー・マネージメント・システムと呼んでいます。
つまり、DriveRackでスピーカーだけで無く部屋の音響特性までコントロールしてしまおうと言うものです。
例えが良いかどうかわかりませんが、アキュフェーズのヴォイシング・イコライザーにチャンネルデバイダーを追加したようなものです。
私の個人的なお勧めは、まずDriveRackを使って部屋の定在波やでディップやピークを出来るだけ抑えた上で、自分好みの音作りをすることです。
測定してわかりましたが、拙宅では80Hzに大きな定在波がありこれが低音をブーミーにしていた主犯でした。
DriveRack PA+やDriveRack 260は別売のマイクを試聴位置にセットして自動的にスピーカーが出した音と部屋の特性を含めた音をほぼフラット化することが出来ます。( DriveRack 4800は手動で可能。)
フラットに拘る訳ではありませんが、ビデオカメラで本来の色を録画するため一番最初にホワイトバランスを合わせる事と似ていると思います。
まず基準を定めそこからスタートすことが大切で、言い方を変えれば、試聴位置でスピーカーから出る周波数のエネルギー・バランスを部屋の特性も含め均等にしてから自分自身の好みの音にすると言うことです。
System Architect はかなりのスピードでバージョンアップされ、使い始めた当時のVer.1,2 から現在ではVer.3,4にまで上がり、すぐに私の古いXPのノートPCでは対応ができなくなってしまいました。
新しくWindows PCを買うことも考えましたが、予算や更にPCが増えてしまうので、iMacでブートキャンプを使いWindows 8.1のOSを入れて切替えて使うことにしました。
Windows PCしか使わない方は Macで Windows ?などと思われるかも知れませんが、私のように Macしか使わない人間にとって Windows用のソフトしか無い場合などブートキャンプはありがたいものです。
ちょっと横道に逸れてしまいましたが、何の問題も無く iMacで、Windows版のSystem Architect が快適に動いています。
DriveRack 4800でアナログ信号を 24bit 96kHzで AD変換しほぼフラットに近い状態にしてから、好みのイコライジングをしてDA変換してパワーアンプに出力します。
右のグラフは、パラメトリック・イコライザーを使って A5用に自分の好みのイコライジングを行ったものです。
前に使っていたDriveRack 260もそうですが、使い切れないほどの機能が満載されています。
dbx DriveRack シリーズは元々ホールや劇場、スタジオなどの音響設備用として使われているようですが、家庭で使ってもデザインを除けばかなり満足できます。
HS-500のサブ・ウーファー追加でDriveRack 260からDriveRack 4800 に変更となりましたが、A5の音にも変化がありました。
一挙にアンプをローコストのアンプにしましたが、スピーカーのネットワークを使い1台のアンプで鳴らす一般的な方法と、スピーカーのネットワークを使わずチャンネルデバイダー等を使って数台のアンプでスピーカーを鳴らす場合のアンプとでは少し考えを変えた方が良いのかも知れません。
拙宅の場合、当初はオリジナルのネットワークを使って鳴らしていたのはA7でした。
その時点でネットワークよりチャンネルデバイダーを使って鳴らした方が部屋の特性を含めた環境と自分自身の好みの音に近づけ易かったのです。
A5にしても同様で、ネットワークが固定されてしまうと細かい事を除けば繋ぐアンプの影響が大きくなりますが、チャンネルデバイダーを使うとクロスオーバー周波数の僅かな変更や、バンドパスフィルター、位相の微調整等を分割した帯域ごとに可変出来、受け持つ帯域は狭くなるので、1台あたりのアンプの影響は少なくなると思います。
昔からマルチチャンネルに一歩足を踏み入れるともう戻れないと言われますが、確かに私もそう思います。
特に最近のチャンネルデバイダーはデジタル化され価格も下がりました。
試行錯誤して本格的なネットワークを組むより最適なクロスオーバーやバンドパスフィルターの数値を追い込むことができ、自分の想い描く音により簡単に近づくことができます。
アンプの変更から話が逸れてしまいましたが、今回のCROWNの組み合わせは拙宅のALTEC A5には非常に良い選択だったと思います。
D-75Aは出力を欲張らず歪みを押さえた設計のようで真空管アンプのようにしっとりと288ドライバーを鳴らします。力強さはありますが、ホーン独特のうるささは全く感じません。
ちょっと信じて頂けないかも知れませんが、クラシックの弦楽器のしなやかな音色や木管楽器の暖かくふわっとした音色も見事に出せます。
D-75AもBTLによるモノラルアンプにしたため、定位・音場感ともに大満足です。
低域用のXLS-402との相性も良く低域との音色の違和感はありません。
D-75AはBTLとするため2台購入しましたが、一般のパワーアンプと比べて安くて良かったのですが、残念な事に最近生産終了となってしまいました。
デザインも含めて小型で素晴らしいパワーアンプだったと思います。
よく言われたトランスの唸りはありますが、シャーシーとトランスの固定の仕方で随分と変わります。また、面白いのは電源クォリティーの善し悪しで唸りが大きく変わり、以前の製品ですがCSE E-100 /2 というクリーンに挿すと唸りは皆無となります。
以前も書きましたが、A5 はA7 と比べて鳴らしやすいスピーカーだと思います。
実際にD-75Aを使い出したのは A5 になってからですが、特にクロスオーバー周波数を500Hzとした場合、実感として500Hz以上を受け持つドライバーの違いが際立ちます。500Hzは以外に低い音で、余裕を持って出力するには288のように振動板面積が大きいと有利です。
それに加えてD-75AをBTLにしたことはクラシックでも大切な中低域の充実感に大きなメリットだと思います。
ALTEC A5 の515ウーファーを余裕を持ってドライブできる大出力のパワーアンプを探していた所、CROWN(AMCRON)のXLS 402(D)というアンプを見つけました。出力はBTL接続で8Ω 900Wのモノラルパワーアンプになり今まで使ったパワーアンプの中で最もハイパワーです。
丁度新しいモデルとの入れ替え時期だったようで2台で10万円少しで購入できました。
あまりにも安かったので2台購入し、L・RそれぞれBTLとして使うことにしました。
写真のようにシンプルでいかにも業務用という感じですが、大型のトロイダルトランスを使用して非常にシンプルな回路のようです。
入力はXLRのみで、ダンピングファクターは200以上となっています。
国内外でモデルチェンジをしながら10年近く販売されてきたパワーアンプなので安心感があります。
家庭用で使うには、強制冷却用のファンの音がうるさいと思います。
実際に使用して発熱が少ないことや全面パネルの半分以上がメッシュとなっていて風通しがよいことからファンの回転をセメント抵抗を入れて発熱に問題が無くうるさくない程度に落としました。
今まで使ったトランジスターのパワーアンプで、8Ω 250W以上のパワーアンプはMcIntosh MC-2300、MC2255、MC-2500、とMcIntoshばかりですがマルチアンプとしてALTEC用には使っていなかったので、単純な比較は出来ませんが、かなり良いパワーアンプです。
力感も十分で、スピード感もあります。どちらかと言えばジャズやポピュラー向きかと思っていましたが、クラシックも意外な程ふっくらとした柔らかな音も出してくれます。
再生している帯域が 〜 500Hzまでということもあるかも知れませんが、この組み合わせ実に気に入りました。
そこでついつい高域のホーンドライバー用のアンプも揃えてみたくなりました。
CROWN(AMCRON)のD-75AとD-45は以前から気になっていたのですぐに決めました。
Dシリーズは、音質を最優先した小出力アンプですが、簡単にBTL接続が出来、パワーを2倍に出来ます。
そこで、D-75A 2台をBTL化して 110Wのモノラルパワーアンプとして左右の288ドライバー用として、500Hz 〜 を受け持たせました。実測でも16,000Hz辺りから徐々にレベルが下がってくるので、D-45 はステレオアンプのままで12.000Hzを改めて16.000Hz 〜 のELAC 4PI PLUS.2用としました。
これでA5 をドライブするアンプは全てCROWN(AMCRON)で統一されました。
5台のアンプの総額は、約30万円で、前に低音用に使っていた300Bのアンプ1台にも及びませんが・・・
アンプ名・出力 |
スピーカー | 受持ち帯域 |
CROWN D-45 ステレオ 25W |
ELAC 4PI PLUS.2 | 16,000Hz 〜 |
CROWN D-75A BTL モノラル 110W |
288 ドライバー |
500Hz 〜 16,000Hz |
CROWN XLS 402 BTL モノラル 900W | 515B ウーファー | 〜 500Hz |
オールホーンで統一するのが一番!と勝手に決め込んで、FOSTEX T500A 2を加えましたが好みの問題でELACの4PI PLUS.2に変更してから3ヶ月位経った頃、Driverack PAの上級機にあたるDriverack 260を1週間程貸し出してもらえる機会がありました。
デジタル機であるためレベルやクロスオーバー、スロープ特性を同様にして試聴するのは非常に簡単です。
早速Driverack 260の設定をDriverack PAに合わせて聴いてみるとやはり違います。
高域についてはあまり感じませんでしたが、明らかに低域が伸びています。
ただ伸びただけではなく、まるで低域のレベルを僅かに上げたような印象なのです。すぐに低域等のレベルを確認しましたがDriverack PAと全く同じ数値のままです。
また、気持ち優等生のようなカッチリとした印象もありましたが・・・
アルテック A5からは離れているようですが、A5に内蔵されているネットワークと考えれば切り離すことは出来ません。
DriveRack PAと260と比べると価格は2倍位高くなりますが、低域の伸びを目の当たりに知ってしまうと良い部分を聴いてしまうDriveRack PAに戻したときの音は低域が痩せて寂しくなってしまいました。
システムによっては違いがあるのかも知れませんが、拙宅のA5システムでは違います。
実際に違いを知って、良さがわかってしまうどうしても欲しくなってしまいます。
1週間ほどで、DriveRack PAを手放し差額と合わせてDriveRack260を購入しました。
やはりDriveRack260の低域は余裕があり伸びていました。
中・高域について変化を感じませんでしたが低域は違います。A5の515ウーファーは軽いウーファーではなく小音量で低域がゆったりと鳴るタイプでは無いと最初から諦めていましたが、ずいぶんと改善されました。
ちょつと古い1968年のDECCA録音ですが、ハンス・シュミット・イッセルシュテット/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団のベートーベンの演奏が好きで時々聴いていますが、今まではっきりしなかったコントラバスの旋律がかなりはっきりして聴いていて追えるようになりました。
不思議なもので、中・高域について変化を感じないと書きましたが、こなれてくると低域が伸びたためかヴァイオリンのしなやかさも加わってきたように聴こえてきます。
ここで考えたのがパワーアンプです。いままで改良したサン・オーディオの300Bの真空管アンプで515ウーファーを鳴らしていましたが、シングルの真空管アンプなので出力は8W程度です。
音質的に不満を感じた訳ではありませんが、DriveRack260に変更して低域が伸びたので、大出力で制動力の大きなアンプで鳴らしたらどう変化するのか知りたくなりました。
A5 のようなホーンシステムにはホーン型のスーパーツィーターが良いと決めてFOSTEX T-90AからT-500A 2 に変わりましたが、聴き込めば聴き込むほど音色の違いが気になりだしました。
音色という言葉通り、A5 と色合いが違うのです。
何方かと言えばA5は明るく元気のある陽性の音色を持っています。FOSTEX T-500A 2も明るく元気野ある音ですが、外見のようにきらびやかな音色を持っています。
私の乏しい文書力では巧く表現出来ませんが、A5 の音は明るい中にもどこか渋さのある明るさなのです。
以前格安で入手したパイオニアのPT-R4というリボン型スーパーツィーターを遊び半分で接続してみた所、何と違和感無くA5と繋がりました。
よくリボン型にはリボン臭さがあるということを聞きますが、ホーンの個性と相殺されているのかも知れません。
とても良い感触を得たので、A5の驚異的な高能率に負けず、更にホーンスピーカーの指向性の強さを補ってくれそうなリボン型のスーパーツィーターを探すことにしました。
そして見つけたのが、ELACの4PI PLUS.2という無指向性のリボン型ツィーターです。
能率も高くカタログ上では92dBあり、入力も定格で400WもありますのでA5にもマッチします。
FOSTEX T-500A 2を手放して代わりに4PI PLUS.2を購入しました。
頑丈な梱包箱から取り出すと、まず大きさと新鮮なデザインに惹かれます。色合いの違いから探していたスーパーツィーターですが、駆動方式は別としても外見の色合いはALTECに近づいたようです。
実際に使ってみると本当に不思議なスーパーツィーターです。
いや、これならクロスオーバーが5,000Hz以上の無指向性ツィーターとしても使えます。
置き場所も通常のスーパーツィーターであれば、A5本体に近づけてセッティングして点音源に近づけたい所ですが、無指向性のため通常のセッティングにこだわらない方が良いようです。
A5 とは12,000Hz -6dBで繋ぎました。私はマルチチャンネルで繋いでいるため4PI PLUS.2の内蔵ネットワークは不要のため、ローカット用のフィルムコンデンサーを介してリボンツィーターユニットにダイレクト接続にしました。
A7 からA5 にシステムを変更しましたが、つくづく感心するのは A7 もA5 も共通して持っている『音楽を楽しく聴かせる』というアルテックのDNAです。
キャラクターと言ってしまえば一言で終わってしまいますが、今まで使ってきた多くのスピーカーの中でここまで音楽を大らかに聴かせてくれたスピーカーはありません。
この気に入ったスピーカーをより良くするために考えたのはスーパーツィーターの追加でした。
A5 はホーンシステムなので、ホーンで統一するということも含め、手頃でしかも評判が良かったのがFOSTEXのT-90Aでした。
スーパーツィーターの有り、無しでははっきりと音の違いが違いがわかります。
A5 の288ドライバー+1005Bの組み合わせでは14,000Hzあたりからなだらかに高域が落ちていきます。
私の耳には高域が14,000Hz位まで伸びていれば十分なのだと思いますが、音の変化は高域だけでなく低域や雰囲気にも及びました。
チャンネルデバイダーのクロスオーバー周波数やレベルを細かく調整して1ヶ月位追い込むと、だんだん違和感も出てきました。
ジャズやポピュラー系のドラムなどのアタックは気持ちがよい反面、チャンネルデバイダーのレベルをかなり下げてもクラシックの声楽の子音や、オーバーですが、弦楽器がスル・ポンティチェロと指示されたような硬質な傾向の音になります。
T-90Aは、海外の高額システムのツィーターとして使用されている実績もあり決して悪いスーパーツィーターではありません。あくまでも私のシステムとの相性、そして好みによるものと思います。
たまたま同じFOSTEX T500A 2が安く入手できたのでT-90Aと交換してみました。
流石にしとやかで、私の好みにずっと近づきました。
ドラムのハイハットや声も違和感無く、一番気にしていた弦楽器のしなやかさも出てきてかなり良い感触です。
ギターの弦と爪のタッチからギター本体の共振まで良く聴いている生の音と違和感無く再現されます。
ベースの輪郭もより明確になりウッドベースの胴鳴りまで心地よくなりました。
これを期に3Way用のデジタルチャンネルデバイダーをdbx Driverack PAに変更しました。
一番の魅力はメモリー機能です。約25パターンのクロスオーバー周波数やレベルを瞬時に切替えできる上、リモコンならぬノートパソコン画面上でも切替えが出来るため、試聴位置に居ながらの変更が可能です。
アナログ式のチャンネルデバイダーと比べ特に音質的な優位性は感じませんでしたが、メモリー機能などを優先し交換しました。
それからしばらく12,000Hz〜14,000Hzを中心に6db〜24dB/Octで微調整を繰り返しました。
一番良いと思ったのは14,000Hz 6dB/Octでした。
また、dbx Driverack PAには28バンド・グラフィックイコライザー、各出力チャンネルにはパラメトリックイコライザーが内蔵されていて部屋の広さや材質、スピーカーの設置場所などから来る低域のピークを調整できます。私の部屋は定在波の影響で、低域の40Hz 〜80Hzあたりに±10dB以上のピークやデプスがありましたがこれをほぼ平坦化でき、低域の解像度は見違えるほど上がりました。
スーパーツィーターから外れてしまいましたが、部屋の音響特性も含め1台で何役もこなせるdbx Driverack は素晴らしいと思います。
さて、そんな中でFOSTEX T500A 2はすっかりとA5 に馴染みましたがA5 とのわずかな音色の違いが気になり始めました・・・
A7 のクロスオーバー周波数を800Hzにして音楽を聴くとジャズもクラシックも破綻無く再生してくれるのですが、両方とも優等生的な感じで物足りなさが残ります。
これは拙宅のシステムや部屋の特性等による影響でそう聴こえるのかも知れませんが・・・
その頃知人宅で使いこなされたA5 の音を聴き、かなりの衝撃を受けました。
クロスオーバー周波数は同じ500Hzでジャズもクラシックも生き生きと鳴らし、拙宅でA7より20年も前から使っている JBL-4343BXWより奇麗にクラシックの弦を再生していました。
もっと時間をかけてA7 を鳴らし込めば良かったのかも知れませんが、あまりに衝撃が大きくどうしてもA5 を自分で鳴らしてみたくなりました。
都合の良い事にA7 で使っているエンクロージャーの828Gは、 A5 と共用できネットワークもチャンネルデバイダーを使用すれば不要となります。ウーファー、ドライバー、ホーンを何とかすれば・・・
結局1ヶ月後にはA7 のエンクロージャーはそのままにユニットはA5 に変身していました。
A5 のウーファーはA7 と同じ38cmですが、416からより強力な515となりドライバーも振動板の直径が異なり802から倍の大きさとなる288に変わりました。A7 のドライバー802とA5の288ドライバーの大きさは写真のように違います。
振動板の口径の違いから高域の周波数特性は、ネットワークを使用した場合の数値で、A7 は 〜20,000 Hz 、A5 は 〜 16,000 Hz となっています。
A7 のホーンは511Bでしたが、A5 のホーンは311-90という鋳造ホーンではなく1005Bという海外で多く使われているホーンにしました。
A7 からA5になって一番変わったと思ったのは中域の厚みです。
良い表現が見つかりませんが、 A7 を500Hzでクロスさせていたとき、特性としては繋がっていたのでしょうが、量的には十分ではなかったように思います。
A7 の802ドライバーのヴォイスコイル口径は約44mmで、A5 の288ドライバーのヴォイスコイル口径は71mmです。500Hzのクロスオーバーを考えると71mmの口径の方が明らかに有利です。
A5 はA7 のような気難しさは無く、ジャズもクラシックも苦労無く良い音で再生してしまいました。
ただ、欲を言えばクラシックの高域の漂うような雰囲気が欲しく、これが再現出来れば以前知人宅で聴いた音に近づきます。
それには16,000Hz以上を受け持つスーパーツィーターを選ばなければと思いました。
A7 でクラシックが聴けるようになったのですが、今度は最初から力強く豪快に鳴っていたジャズがダメになってしまいました。
お気に入りのジョン・コルトレーン『マイ・フェイバリット・シングス』は女性的でキレイになり過ぎ、ソプラノサックスといえどもコルトレーンの力強さが無くなってしまいました。
オヤジギャグ風に言うなら『マイ・フワリット・寝具ス』!
とにかく粗粗しさはないものの『借りてきた猫』のような大人しくてつかみ所のない音になってしまいました。
この状態で、dbxのチャンネルデバイダーの設定を1,2kHzから500Hzに変更すると、コルトレーンは息を吹き返して大柄な体で演奏を再開してくれました。荒々しい息づかいも復活です。
多少荒々しくてもやっぱりジャズはこうでなくちゃ! という音に戻りました。
チャンネルデバイダーのおかげでジャズを聴くときは500Hz、クラシックを聴くときは1.2kHzと都度切変えて聴けば良いのですが、聴く音楽によってチャンネルデバイダーを切替えるのは私の性格からして精神衛生上良くありません。
音楽を良い音で聴くために装置やらセッティングに凝ったりもしますが、一度セットしたら音楽のジャンルなど気にせずにゆっくり、じっくり聴きたいのです。
そこで、A7 のもう一つの推奨ポイント、500Hzと1,2kHzの中間にある800Hzを聴いてみることにしました。
アルテックのA7 からクラシック音楽を少しでも良い音で聴けるようにするために思いついたのが、A7のクロスオーバー周波数の変更でした。そのためアルテック純正のクロスオーバーネットワークの購入や自作することも考えましたが、アルテックとは別に、こちらも思い入れのある日立のHS-500というスピーカーを通して知り合ったK&Kさんのアドバイスから、マルチチャンネル化してクロスオーバー周波数やゲインを自由に選べるようにしました。
マルチチャンネル化するために必要な物は、ネットワークに変わるチャンネルデバイダーです。
数多くはありませんが、アナログ式、デジタル式のものがあり、先ずは実験と思い比較的安価なアナログ式のdbxの223XSという機種を購入しました。
アンプは自分で手を加えたサンオーディオの真空管パワーアンプ300B (低音用) と2A3 (高音用) の2台を使いました。
クロスオーバーは1.2kHz、フィルターはリンクウィッツ・ライリー(これのみで選択不可)24dB/oct、正相接続で低音と高音のゲインを調整しながら少しずつバランスを取りながら聴いてみました。結果はかなり良いです。
何より気になっていた高音の暴れが減って柔らかい音になっています。
やはりクラシックを聴くためA7のクロスオーバー周波数を1.2kHzにしたことは正解でした。
弦の音を聴くため、慣れているクラシックのレコードをかけました。
レコード時代からのオーディオ・マニアの方なら、どなたでも聴き慣れていて、それを聴けばおおよそのアンプやスピーカー、カートリッジなどの性格がわかってしまうと言うレコードを何枚かお持ちだと思います。
私の場合、一番はこのレコードです。レオンタイン・プライスのソプラノ/カラヤン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団がクリスマスの名曲を演奏したレコード。プライスの声、ウィーンフィルの弦の美しさは1961年の録音でも色褪せていません。
もう40年も聴いているので、演奏以外の暗騒音、床の軋みやハープのペダルの踏み込み音までいつの間にか覚えてしまい、それらの音も音楽の一部のようになってしまいました。
アルテック A7 で聴くクラシック、まだ気になる所もあるけれど、最初に比べるれば随分良とくなりクラシックも聴けるようになりました。プライスの瑞々しい声やウィーンフィル独特の弦の音が鼻にかかってような音色も聴けるようになり、嬉しくて何枚クラシックレコードを聴いたかわかりません。
あまりにクラシックばかり聴いていたので、気分を変えてジャズでも、と、コルトレーンの『マイ・フェイバリット・シングス』のレコードをかけたところ・・・
そもそもクラシックが上手く再生できるスピーカーとは?
と質問したらオーディオ・音楽好きの方の多く方から『タンノイ』と言う答えが返ってくると思います。
でも何故、タンノイはクラシックを上手く再生できるのに何でアルテック A7は・・・
と考えながら悶々とした日がしばらく続いていました。
確かに弦楽四重奏などは、奏でると言うより擦れる、響くと言うより鳴るという感じです。
そんな時に思いついたのがスピーカーのクロスオーバーの違いでした。タンノイもアルテックもユニットやエンクロージャー、方式の違いはあっても2Wayスピーカーです。
つまり、低音用スピーカーと高音用スピーカーはそれぞれ得意な音楽帯域を喧嘩することなく受け持って再生しています。
私のアルテック A7は、低音用スピーカー、高音用スピーカーの受け持っている音楽帯域(クロスオーバー周波数)が500Hzと低いためにクラシックを上手く再生できないのでは?
販売されているスピーカー(スピーカーシステム)は、スピーカー自体の特性(性能)や組み合わせるエンクロージャー(スピーカーボックス)によって低音用と高音用の最も良い境目、(クロスオーバー周波数)を決めます。
その境目を中心にしてそれぞれのスピーカーが相手の音を邪魔しないようにお互いの音量をデクレッシェンドしていきます。
タンノイの殆どのシステムはクロスオーバー周波数が1.100Hz(1.1kHz)に設定され、私のアルテック A7 の500Hzとは異なります。
しかし、同じA7 でも機種によっては、クロスオーバー周波数が、800Hz、1,200Hzの物もあり、500Hzと800Hz、1,200Hzでは高域のホーンの大きさが異なるもののそれ以外のスピーカーは同様です。
何とか私のA7 のクロスオーバー周波数をタンノイの1,100Hzに近い 1,200Hzに変えられないものだろうか?
アルテックと言っても若い方にはピント来ないかも知れませんので簡単にアルテックについて簡単に触れておきます。
CDなど考えることも出来なかった1970年代、アナログレコード全盛時代の憧れのスピーカーと言えば多くのマニアがアメリカのJBLやアルテック(ALTEC)に憧れていたと思います。
アルテックのスタートは、1937年に設立されたアルテックサービスが、1941年にランシング・マニュファクチャリング社(社長はジェーム・B・ランシング)を買収して社名を「アルテック・ランシング」とし、ランシングを技術担当副社長に迎えた時からとなります。
ランシングは副社長と言うより天才的な技術者で、多くの優れたスピーカーを開発し、中でも604ユニット、515ウーファー、288ドライバーなどは現在でも色褪せることがありません。
しかし、ランシングは、5年でアルテックを退職し1946年には自分の名前の頭文字を取った会社”JBL”を設立します。
ここでも優れた能力を発揮しますが・・・
いずれにしてもランシングがアルテックやJBLの基礎となるユニットを創り上げて、それが60年以上経った現在でも通用していることは驚くべきことです。
JBLもアルテックもランシングが開発した優れたユニットから成り立っている訳ですが、もう一つ共通点があります。それは殆どの製品が録音スタジオや映画館、劇場、ホールなどで使われることを前提の業務用であったと言うことです。
アルテックの製品の中で特に映画感や劇場用として1945年〜1955年位に開発・製造されたのが『ヴォイス・オブ・ザ・シアター』と呼ばれる A2、A4、A5、A7、A8 などです。
と言うことで本題に戻しますが、映画館や劇場で使われているA7なら偏りなくどんな音楽でも上手く再生できるだろうと思ったことが苦労のはじまりでした。
1月になると必ず思い出すことがあります。
もう10年も経ってしまいましたが、長年欲しかったALTEC A7が12月30日の夜に届き、元旦から3日まで音楽を聴きまくった事です。
高校時代に初めて見た時、いかにも無骨でプロ用スピーカーという形に圧倒されて憧れていたスピーカーを30年かけて入手出来たのですから本当に嬉しかったです。
しかし、頭の中では問題のない大きさだった A7も9畳程度の部屋に置くと大きくそして上手く再生するにはかなり無理があることに気づきました。
遠くで見ている分には目立たないものでも近くで見ると・・・
と同じ事が音にも言えそうです。
広い部屋で空間を空けて聴けば目立たなくても、狭い部屋で向き合って聴けばアラも目立つと言うことです。
雑誌や、オーディオ仲間からも「JBLならクラシックも聴けるがアルテックでは無理だ」等と言われていましたが、昔ジャズ喫茶で聴いた明るく、迫力があり実体感のある音でクラシックを聴いてみたいと思っていました。
しかし、
実際にはジャズやポップスは良いにしても、クラシックの弦楽器は300Bの真空管アンプで再生しても評判通り思う音が出てくれませんでした。
その時、「アルテックでクラシックを聴くぞ!」と心の中で決め、クラシック音楽が快く再生できるようチャレンジしていくことに決めたのです。
随分間が空いてしまいましたが、サブ・ウーファーを追加した
WoodWill版HS-500はとても良くなりました。
特にクラシック音楽の再生にサブ・ウーファーの有り、無しは大きく影響します。
さて、アルテック A5ですが、スーパーツィーターを加え、高域の表現力には繊細さも加わりましたが、低域は40Hz位までが限界で後はだら下がりです。
クラシック音楽の空気感を再現できるようにするにはもっと下まで伸ばす必要があります。
そこで、WoodWill版HS-500用に購入したYAMAHA NS-SW500というサブ・ウーファーを共有することにしました。
サイズも写真のようにピッタリなので、WoodWill版HS-500のスピーカースタンドとしても使用しています。
僅か、25cmのスピーカーですがレベルを上げるとヤマハ独自のA-YST II方式で音としてではなく部屋の振動として超低域がしっかりと再生されていることに気付きます。
NS-SW500にはハイカットが内蔵され40Hz~140Hzを連続可変出来ますが、受け持ち帯域は40Hz以下としてDriveRack4800を組み合わせ上手く繫がりました。
アルテック A5は、最新の技術を駆使し、新素材を使って作られた現代のスピーカーから見ると何とも古ぼけたスピーカーに見えてしまうと思いますが、益々好きになってきました。
昨年の暮れになりますが、レーザーターンテーブルのアップグレードの件で拙宅にお越し頂いた I さんがお使いのスピーカーが タンノイ ヨーク・ミンスターでした。
部屋の関係で、非常に残響が多く音がこもっていてスッキリせず、ご自身の好みの音に出来るまでかなり苦労され10年かかってようやく好みの音が出せるようになって来たと仰っていました。
私自身も以前4種類のタンノイを使っていましたのでタンノイが持つ素晴らしさを実体験して知っていますが、上手く鳴らしたときの弦楽器や木管楽器の美しさは格別です。
しかし、いきなりそんな音が出るわけでは無くイメージより硬質な音調なので、柔らかく解きほぐすのには苦労すると思います。
そんなタンノイでクラシックを聴いていらっしゃる方の客観的な感想はとても重要で参考になりました。
アルテック A5を聴かれた後の I さんの第一声は、「これアルテックですか ?」でした。
驚かれたようで、曲の再生途中でソファーから立たれてアルテックの近くまで耳を近づけていました。
イメージしていたアルテックとは180度違う音だったようです。
まずは音が柔らかくて驚かれたようで、お使いのヨーク・ミンスターより優しい音がするそうで、クラシックを聴いても違和感は全くなく、全体的にはむしろ A5の方がクラシックが上手く鳴っていると仰って頂きました。
参考
お聴き頂いたレコードは器楽曲や室内楽がお好きとの事で下記が中心となりました。
お褒めの言葉としても嬉しかったです。
やはりサブ・ウーファーの追加による効果は大きく、音全体が柔らかくなりました。
また、大きな効果が出るのはクラシックの方が多く、大ホールでの録音はよりゆったりと聴くことができます。
元々、大編成のオーケストラは鳴りっぷりの良さが吉と出て鳴ってくれますが、器楽曲や室内楽では粗が出やすく難しいソースでした。
サブ・ウーファーの追加は、正解でアルテックでクラシックが聴けるようになって来ました。
アンプの交換などによりクラシックを聴いてもかなり満足できるようになりましたが、A5の他に以前から愛用しているLo-D HS-500の低域を充実させてみたくなりました。
A5よりも付き合いがずっと長い分、殆ど満足のいく音を出してくれるようになりクラシックからジャズ、ポピュラーまで何でも無難に熟してくれます。
オリジナルのHS-500では十分な真価を発揮できませんでしたが、ネットワークを止めマルチにし、エンクロージャーをウッドウィルに依頼して作ってもらってからは40年前のスピーカーという歳月を全く感じさせず、遊びに来ていただいたオーディオ仲間も驚くほどの鳴りっぷりに変身しました。
音質的には何の不満もありませんが、低域の量感はにはちょっと寂しさが残ります。
まあそれは口径20cmのウーファーに望んでも酷というものです。
そこで、HS-500の低域を伸ばすためサブウーファーを追加することにしました。
それまではHS-500本来の2Wayに、高域の味付けにとスーパーツィーターの4PI PLUS.2をLuxmanのAS-55で切替えて A5と共用していました。
(エンクロージャーはウッドウィルにて制作)
HS-500とサブウーファーを上手く繋ぐためにはサブウーファーに内蔵されたもので役不足でどうしてもチャンネルデバイダーが欲しくなります。
音質的にも満足していたDriveRack 260ですが、これには出力が3ch × 2しかなく3Wayまでの対応しか出来ず、4Wayに対応出来るものが必要となりました。
4Wayに対応できるチャンネルデバイダーは少ないため迷わず同じdbxの DriveRack 4800にしました。
本体の高さは2倍になりましたが、DriveRack 260に比べかなりゴチャゴチャンしています。
内蔵のカラー液晶画面を見ながら、一つのボタンを数回押したりしてモードを変更するのですが、不器用な私には不向きで Windows PCを使って操作することにしました。
dbxのホームページよりSystem ArchitectというソフトをDLして使いますが、拙宅のPCは私の好みからMacばかりで、唯一のWindows PCは古いVAIOのノートでしかもOSはXPです。
快適ではありませんが、何とかPC上からDriveRack4800をコントロール出来るようになりました。
今まで、チャンネルデバイダーという言い方で済ませてきましたが、dbxではDriveRackシリーズをスピーカー・マネージメント・システムと呼んでいます。
つまり、DriveRackでスピーカーだけで無く部屋の音響特性までコントロールしてしまおうと言うものです。
例えが良いかどうかわかりませんが、アキュフェーズのヴォイシング・イコライザーにチャンネルデバイダーを追加したようなものです。
私の個人的なお勧めは、まずDriveRackを使って部屋の定在波やでディップやピークを出来るだけ抑えた上で、自分好みの音作りをすることです。
測定してわかりましたが、拙宅では80Hzに大きな定在波がありこれが低音をブーミーにしていた主犯でした。
DriveRack PA+やDriveRack 260は別売のマイクを試聴位置にセットして自動的にスピーカーが出した音と部屋の特性を含めた音をほぼフラット化することが出来ます。( DriveRack 4800は手動で可能。)
フラットに拘る訳ではありませんが、ビデオカメラで本来の色を録画するため一番最初にホワイトバランスを合わせる事と似ていると思います。
まず基準を定めそこからスタートすことが大切で、言い方を変えれば、試聴位置でスピーカーから出る周波数のエネルギー・バランスを部屋の特性も含め均等にしてから自分自身の好みの音にすると言うことです。
System Architect はかなりのスピードでバージョンアップされ、使い始めた当時のVer.1,2 から現在ではVer.3,4にまで上がり、すぐに私の古いXPのノートPCでは対応ができなくなってしまいました。
新しくWindows PCを買うことも考えましたが、予算や更にPCが増えてしまうので、iMacでブートキャンプを使いWindows 8.1のOSを入れて切替えて使うことにしました。
Windows PCしか使わない方は Macで Windows ?などと思われるかも知れませんが、私のように Macしか使わない人間にとって Windows用のソフトしか無い場合などブートキャンプはありがたいものです。
ちょっと横道に逸れてしまいましたが、何の問題も無く iMacで、Windows版のSystem Architect が快適に動いています。
DriveRack 4800でアナログ信号を 24bit 96kHzで AD変換しほぼフラットに近い状態にしてから、好みのイコライジングをしてDA変換してパワーアンプに出力します。
右のグラフは、パラメトリック・イコライザーを使って A5用に自分の好みのイコライジングを行ったものです。
前に使っていたDriveRack 260もそうですが、使い切れないほどの機能が満載されています。
dbx DriveRack シリーズは元々ホールや劇場、スタジオなどの音響設備用として使われているようですが、家庭で使ってもデザインを除けばかなり満足できます。
HS-500のサブ・ウーファー追加でDriveRack 260からDriveRack 4800 に変更となりましたが、A5の音にも変化がありました。
一挙にアンプをローコストのアンプにしましたが、スピーカーのネットワークを使い1台のアンプで鳴らす一般的な方法と、スピーカーのネットワークを使わずチャンネルデバイダー等を使って数台のアンプでスピーカーを鳴らす場合のアンプとでは少し考えを変えた方が良いのかも知れません。
拙宅の場合、当初はオリジナルのネットワークを使って鳴らしていたのはA7でした。
その時点でネットワークよりチャンネルデバイダーを使って鳴らした方が部屋の特性を含めた環境と自分自身の好みの音に近づけ易かったのです。
A5にしても同様で、ネットワークが固定されてしまうと細かい事を除けば繋ぐアンプの影響が大きくなりますが、チャンネルデバイダーを使うとクロスオーバー周波数の僅かな変更や、バンドパスフィルター、位相の微調整等を分割した帯域ごとに可変出来、受け持つ帯域は狭くなるので、1台あたりのアンプの影響は少なくなると思います。
昔からマルチチャンネルに一歩足を踏み入れるともう戻れないと言われますが、確かに私もそう思います。
特に最近のチャンネルデバイダーはデジタル化され価格も下がりました。
試行錯誤して本格的なネットワークを組むより最適なクロスオーバーやバンドパスフィルターの数値を追い込むことができ、自分の想い描く音により簡単に近づくことができます。
アンプの変更から話が逸れてしまいましたが、今回のCROWNの組み合わせは拙宅のALTEC A5には非常に良い選択だったと思います。
D-75Aは出力を欲張らず歪みを押さえた設計のようで真空管アンプのようにしっとりと288ドライバーを鳴らします。力強さはありますが、ホーン独特のうるささは全く感じません。
ちょっと信じて頂けないかも知れませんが、クラシックの弦楽器のしなやかな音色や木管楽器の暖かくふわっとした音色も見事に出せます。
D-75AもBTLによるモノラルアンプにしたため、定位・音場感ともに大満足です。
低域用のXLS-402との相性も良く低域との音色の違和感はありません。
D-75AはBTLとするため2台購入しましたが、一般のパワーアンプと比べて安くて良かったのですが、残念な事に最近生産終了となってしまいました。
デザインも含めて小型で素晴らしいパワーアンプだったと思います。
よく言われたトランスの唸りはありますが、シャーシーとトランスの固定の仕方で随分と変わります。また、面白いのは電源クォリティーの善し悪しで唸りが大きく変わり、以前の製品ですがCSE E-100 /2 というクリーンに挿すと唸りは皆無となります。
以前も書きましたが、A5 はA7 と比べて鳴らしやすいスピーカーだと思います。
実際にD-75Aを使い出したのは A5 になってからですが、特にクロスオーバー周波数を500Hzとした場合、実感として500Hz以上を受け持つドライバーの違いが際立ちます。500Hzは以外に低い音で、余裕を持って出力するには288のように振動板面積が大きいと有利です。
それに加えてD-75AをBTLにしたことはクラシックでも大切な中低域の充実感に大きなメリットだと思います。
ALTEC A5 の515ウーファーを余裕を持ってドライブできる大出力のパワーアンプを探していた所、CROWN(AMCRON)のXLS 402(D)というアンプを見つけました。出力はBTL接続で8Ω 900Wのモノラルパワーアンプになり今まで使ったパワーアンプの中で最もハイパワーです。
丁度新しいモデルとの入れ替え時期だったようで2台で10万円少しで購入できました。
あまりにも安かったので2台購入し、L・RそれぞれBTLとして使うことにしました。
写真のようにシンプルでいかにも業務用という感じですが、大型のトロイダルトランスを使用して非常にシンプルな回路のようです。
入力はXLRのみで、ダンピングファクターは200以上となっています。
国内外でモデルチェンジをしながら10年近く販売されてきたパワーアンプなので安心感があります。
家庭用で使うには、強制冷却用のファンの音がうるさいと思います。
実際に使用して発熱が少ないことや全面パネルの半分以上がメッシュとなっていて風通しがよいことからファンの回転をセメント抵抗を入れて発熱に問題が無くうるさくない程度に落としました。
今まで使ったトランジスターのパワーアンプで、8Ω 250W以上のパワーアンプはMcIntosh MC-2300、MC2255、MC-2500、とMcIntoshばかりですがマルチアンプとしてALTEC用には使っていなかったので、単純な比較は出来ませんが、かなり良いパワーアンプです。
力感も十分で、スピード感もあります。どちらかと言えばジャズやポピュラー向きかと思っていましたが、クラシックも意外な程ふっくらとした柔らかな音も出してくれます。
再生している帯域が 〜 500Hzまでということもあるかも知れませんが、この組み合わせ実に気に入りました。
そこでついつい高域のホーンドライバー用のアンプも揃えてみたくなりました。
CROWN(AMCRON)のD-75AとD-45は以前から気になっていたのですぐに決めました。
Dシリーズは、音質を最優先した小出力アンプですが、簡単にBTL接続が出来、パワーを2倍に出来ます。
そこで、D-75A 2台をBTL化して 110Wのモノラルパワーアンプとして左右の288ドライバー用として、500Hz 〜 を受け持たせました。実測でも16,000Hz辺りから徐々にレベルが下がってくるので、D-45 はステレオアンプのままで12.000Hzを改めて16.000Hz 〜 のELAC 4PI PLUS.2用としました。
これでA5 をドライブするアンプは全てCROWN(AMCRON)で統一されました。
5台のアンプの総額は、約30万円で、前に低音用に使っていた300Bのアンプ1台にも及びませんが・・・
アンプ名・出力 |
スピーカー | 受持ち帯域 |
CROWN D-45 ステレオ 25W |
ELAC 4PI PLUS.2 | 16,000Hz 〜 |
CROWN D-75A BTL モノラル 110W |
288 ドライバー |
500Hz 〜 16,000Hz |
CROWN XLS 402 BTL モノラル 900W | 515B ウーファー | 〜 500Hz |
オールホーンで統一するのが一番!と勝手に決め込んで、FOSTEX T500A 2を加えましたが好みの問題でELACの4PI PLUS.2に変更してから3ヶ月位経った頃、Driverack PAの上級機にあたるDriverack 260を1週間程貸し出してもらえる機会がありました。
デジタル機であるためレベルやクロスオーバー、スロープ特性を同様にして試聴するのは非常に簡単です。
早速Driverack 260の設定をDriverack PAに合わせて聴いてみるとやはり違います。
高域についてはあまり感じませんでしたが、明らかに低域が伸びています。
ただ伸びただけではなく、まるで低域のレベルを僅かに上げたような印象なのです。すぐに低域等のレベルを確認しましたがDriverack PAと全く同じ数値のままです。
また、気持ち優等生のようなカッチリとした印象もありましたが・・・
アルテック A5からは離れているようですが、A5に内蔵されているネットワークと考えれば切り離すことは出来ません。
DriveRack PAと260と比べると価格は2倍位高くなりますが、低域の伸びを目の当たりに知ってしまうと良い部分を聴いてしまうDriveRack PAに戻したときの音は低域が痩せて寂しくなってしまいました。
システムによっては違いがあるのかも知れませんが、拙宅のA5システムでは違います。
実際に違いを知って、良さがわかってしまうどうしても欲しくなってしまいます。
1週間ほどで、DriveRack PAを手放し差額と合わせてDriveRack260を購入しました。
やはりDriveRack260の低域は余裕があり伸びていました。
中・高域について変化を感じませんでしたが低域は違います。A5の515ウーファーは軽いウーファーではなく小音量で低域がゆったりと鳴るタイプでは無いと最初から諦めていましたが、ずいぶんと改善されました。
ちょつと古い1968年のDECCA録音ですが、ハンス・シュミット・イッセルシュテット/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団のベートーベンの演奏が好きで時々聴いていますが、今まではっきりしなかったコントラバスの旋律がかなりはっきりして聴いていて追えるようになりました。
不思議なもので、中・高域について変化を感じないと書きましたが、こなれてくると低域が伸びたためかヴァイオリンのしなやかさも加わってきたように聴こえてきます。
ここで考えたのがパワーアンプです。いままで改良したサン・オーディオの300Bの真空管アンプで515ウーファーを鳴らしていましたが、シングルの真空管アンプなので出力は8W程度です。
音質的に不満を感じた訳ではありませんが、DriveRack260に変更して低域が伸びたので、大出力で制動力の大きなアンプで鳴らしたらどう変化するのか知りたくなりました。
A5 のようなホーンシステムにはホーン型のスーパーツィーターが良いと決めてFOSTEX T-90AからT-500A 2 に変わりましたが、聴き込めば聴き込むほど音色の違いが気になりだしました。
音色という言葉通り、A5 と色合いが違うのです。
何方かと言えばA5は明るく元気のある陽性の音色を持っています。FOSTEX T-500A 2も明るく元気野ある音ですが、外見のようにきらびやかな音色を持っています。
私の乏しい文書力では巧く表現出来ませんが、A5 の音は明るい中にもどこか渋さのある明るさなのです。
以前格安で入手したパイオニアのPT-R4というリボン型スーパーツィーターを遊び半分で接続してみた所、何と違和感無くA5と繋がりました。
よくリボン型にはリボン臭さがあるということを聞きますが、ホーンの個性と相殺されているのかも知れません。
とても良い感触を得たので、A5の驚異的な高能率に負けず、更にホーンスピーカーの指向性の強さを補ってくれそうなリボン型のスーパーツィーターを探すことにしました。
そして見つけたのが、ELACの4PI PLUS.2という無指向性のリボン型ツィーターです。
能率も高くカタログ上では92dBあり、入力も定格で400WもありますのでA5にもマッチします。
FOSTEX T-500A 2を手放して代わりに4PI PLUS.2を購入しました。
頑丈な梱包箱から取り出すと、まず大きさと新鮮なデザインに惹かれます。色合いの違いから探していたスーパーツィーターですが、駆動方式は別としても外見の色合いはALTECに近づいたようです。
実際に使ってみると本当に不思議なスーパーツィーターです。
いや、これならクロスオーバーが5,000Hz以上の無指向性ツィーターとしても使えます。
置き場所も通常のスーパーツィーターであれば、A5本体に近づけてセッティングして点音源に近づけたい所ですが、無指向性のため通常のセッティングにこだわらない方が良いようです。
A5 とは12,000Hz -6dBで繋ぎました。私はマルチチャンネルで繋いでいるため4PI PLUS.2の内蔵ネットワークは不要のため、ローカット用のフィルムコンデンサーを介してリボンツィーターユニットにダイレクト接続にしました。
A7 からA5 にシステムを変更しましたが、つくづく感心するのは A7 もA5 も共通して持っている『音楽を楽しく聴かせる』というアルテックのDNAです。
キャラクターと言ってしまえば一言で終わってしまいますが、今まで使ってきた多くのスピーカーの中でここまで音楽を大らかに聴かせてくれたスピーカーはありません。
この気に入ったスピーカーをより良くするために考えたのはスーパーツィーターの追加でした。
A5 はホーンシステムなので、ホーンで統一するということも含め、手頃でしかも評判が良かったのがFOSTEXのT-90Aでした。
スーパーツィーターの有り、無しでははっきりと音の違いが違いがわかります。
A5 の288ドライバー+1005Bの組み合わせでは14,000Hzあたりからなだらかに高域が落ちていきます。
私の耳には高域が14,000Hz位まで伸びていれば十分なのだと思いますが、音の変化は高域だけでなく低域や雰囲気にも及びました。
チャンネルデバイダーのクロスオーバー周波数やレベルを細かく調整して1ヶ月位追い込むと、だんだん違和感も出てきました。
ジャズやポピュラー系のドラムなどのアタックは気持ちがよい反面、チャンネルデバイダーのレベルをかなり下げてもクラシックの声楽の子音や、オーバーですが、弦楽器がスル・ポンティチェロと指示されたような硬質な傾向の音になります。
T-90Aは、海外の高額システムのツィーターとして使用されている実績もあり決して悪いスーパーツィーターではありません。あくまでも私のシステムとの相性、そして好みによるものと思います。
たまたま同じFOSTEX T500A 2が安く入手できたのでT-90Aと交換してみました。
流石にしとやかで、私の好みにずっと近づきました。
ドラムのハイハットや声も違和感無く、一番気にしていた弦楽器のしなやかさも出てきてかなり良い感触です。
ギターの弦と爪のタッチからギター本体の共振まで良く聴いている生の音と違和感無く再現されます。
ベースの輪郭もより明確になりウッドベースの胴鳴りまで心地よくなりました。
これを期に3Way用のデジタルチャンネルデバイダーをdbx Driverack PAに変更しました。
一番の魅力はメモリー機能です。約25パターンのクロスオーバー周波数やレベルを瞬時に切替えできる上、リモコンならぬノートパソコン画面上でも切替えが出来るため、試聴位置に居ながらの変更が可能です。
アナログ式のチャンネルデバイダーと比べ特に音質的な優位性は感じませんでしたが、メモリー機能などを優先し交換しました。
それからしばらく12,000Hz〜14,000Hzを中心に6db〜24dB/Octで微調整を繰り返しました。
一番良いと思ったのは14,000Hz 6dB/Octでした。
また、dbx Driverack PAには28バンド・グラフィックイコライザー、各出力チャンネルにはパラメトリックイコライザーが内蔵されていて部屋の広さや材質、スピーカーの設置場所などから来る低域のピークを調整できます。私の部屋は定在波の影響で、低域の40Hz 〜80Hzあたりに±10dB以上のピークやデプスがありましたがこれをほぼ平坦化でき、低域の解像度は見違えるほど上がりました。
スーパーツィーターから外れてしまいましたが、部屋の音響特性も含め1台で何役もこなせるdbx Driverack は素晴らしいと思います。
さて、そんな中でFOSTEX T500A 2はすっかりとA5 に馴染みましたがA5 とのわずかな音色の違いが気になり始めました・・・
A7 のクロスオーバー周波数を800Hzにして音楽を聴くとジャズもクラシックも破綻無く再生してくれるのですが、両方とも優等生的な感じで物足りなさが残ります。
これは拙宅のシステムや部屋の特性等による影響でそう聴こえるのかも知れませんが・・・
その頃知人宅で使いこなされたA5 の音を聴き、かなりの衝撃を受けました。
クロスオーバー周波数は同じ500Hzでジャズもクラシックも生き生きと鳴らし、拙宅でA7より20年も前から使っている JBL-4343BXWより奇麗にクラシックの弦を再生していました。
もっと時間をかけてA7 を鳴らし込めば良かったのかも知れませんが、あまりに衝撃が大きくどうしてもA5 を自分で鳴らしてみたくなりました。
都合の良い事にA7 で使っているエンクロージャーの828Gは、 A5 と共用できネットワークもチャンネルデバイダーを使用すれば不要となります。ウーファー、ドライバー、ホーンを何とかすれば・・・
結局1ヶ月後にはA7 のエンクロージャーはそのままにユニットはA5 に変身していました。
A5 のウーファーはA7 と同じ38cmですが、416からより強力な515となりドライバーも振動板の直径が異なり802から倍の大きさとなる288に変わりました。A7 のドライバー802とA5の288ドライバーの大きさは写真のように違います。
振動板の口径の違いから高域の周波数特性は、ネットワークを使用した場合の数値で、A7 は 〜20,000 Hz 、A5 は 〜 16,000 Hz となっています。
A7 のホーンは511Bでしたが、A5 のホーンは311-90という鋳造ホーンではなく1005Bという海外で多く使われているホーンにしました。
A7 からA5になって一番変わったと思ったのは中域の厚みです。
良い表現が見つかりませんが、 A7 を500Hzでクロスさせていたとき、特性としては繋がっていたのでしょうが、量的には十分ではなかったように思います。
A7 の802ドライバーのヴォイスコイル口径は約44mmで、A5 の288ドライバーのヴォイスコイル口径は71mmです。500Hzのクロスオーバーを考えると71mmの口径の方が明らかに有利です。
A5 はA7 のような気難しさは無く、ジャズもクラシックも苦労無く良い音で再生してしまいました。
ただ、欲を言えばクラシックの高域の漂うような雰囲気が欲しく、これが再現出来れば以前知人宅で聴いた音に近づきます。
それには16,000Hz以上を受け持つスーパーツィーターを選ばなければと思いました。
A7 でクラシックが聴けるようになったのですが、今度は最初から力強く豪快に鳴っていたジャズがダメになってしまいました。
お気に入りのジョン・コルトレーン『マイ・フェイバリット・シングス』は女性的でキレイになり過ぎ、ソプラノサックスといえどもコルトレーンの力強さが無くなってしまいました。
オヤジギャグ風に言うなら『マイ・フワリット・寝具ス』!
とにかく粗粗しさはないものの『借りてきた猫』のような大人しくてつかみ所のない音になってしまいました。
この状態で、dbxのチャンネルデバイダーの設定を1,2kHzから500Hzに変更すると、コルトレーンは息を吹き返して大柄な体で演奏を再開してくれました。荒々しい息づかいも復活です。
多少荒々しくてもやっぱりジャズはこうでなくちゃ! という音に戻りました。
チャンネルデバイダーのおかげでジャズを聴くときは500Hz、クラシックを聴くときは1.2kHzと都度切変えて聴けば良いのですが、聴く音楽によってチャンネルデバイダーを切替えるのは私の性格からして精神衛生上良くありません。
音楽を良い音で聴くために装置やらセッティングに凝ったりもしますが、一度セットしたら音楽のジャンルなど気にせずにゆっくり、じっくり聴きたいのです。
そこで、A7 のもう一つの推奨ポイント、500Hzと1,2kHzの中間にある800Hzを聴いてみることにしました。
アルテックのA7 からクラシック音楽を少しでも良い音で聴けるようにするために思いついたのが、A7のクロスオーバー周波数の変更でした。そのためアルテック純正のクロスオーバーネットワークの購入や自作することも考えましたが、アルテックとは別に、こちらも思い入れのある日立のHS-500というスピーカーを通して知り合ったK&Kさんのアドバイスから、マルチチャンネル化してクロスオーバー周波数やゲインを自由に選べるようにしました。
マルチチャンネル化するために必要な物は、ネットワークに変わるチャンネルデバイダーです。
数多くはありませんが、アナログ式、デジタル式のものがあり、先ずは実験と思い比較的安価なアナログ式のdbxの223XSという機種を購入しました。
アンプは自分で手を加えたサンオーディオの真空管パワーアンプ300B (低音用) と2A3 (高音用) の2台を使いました。
クロスオーバーは1.2kHz、フィルターはリンクウィッツ・ライリー(これのみで選択不可)24dB/oct、正相接続で低音と高音のゲインを調整しながら少しずつバランスを取りながら聴いてみました。結果はかなり良いです。
何より気になっていた高音の暴れが減って柔らかい音になっています。
やはりクラシックを聴くためA7のクロスオーバー周波数を1.2kHzにしたことは正解でした。
弦の音を聴くため、慣れているクラシックのレコードをかけました。
レコード時代からのオーディオ・マニアの方なら、どなたでも聴き慣れていて、それを聴けばおおよそのアンプやスピーカー、カートリッジなどの性格がわかってしまうと言うレコードを何枚かお持ちだと思います。
私の場合、一番はこのレコードです。レオンタイン・プライスのソプラノ/カラヤン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団がクリスマスの名曲を演奏したレコード。プライスの声、ウィーンフィルの弦の美しさは1961年の録音でも色褪せていません。
もう40年も聴いているので、演奏以外の暗騒音、床の軋みやハープのペダルの踏み込み音までいつの間にか覚えてしまい、それらの音も音楽の一部のようになってしまいました。
アルテック A7 で聴くクラシック、まだ気になる所もあるけれど、最初に比べるれば随分良とくなりクラシックも聴けるようになりました。プライスの瑞々しい声やウィーンフィル独特の弦の音が鼻にかかってような音色も聴けるようになり、嬉しくて何枚クラシックレコードを聴いたかわかりません。
あまりにクラシックばかり聴いていたので、気分を変えてジャズでも、と、コルトレーンの『マイ・フェイバリット・シングス』のレコードをかけたところ・・・
そもそもクラシックが上手く再生できるスピーカーとは?
と質問したらオーディオ・音楽好きの方の多く方から『タンノイ』と言う答えが返ってくると思います。
でも何故、タンノイはクラシックを上手く再生できるのに何でアルテック A7は・・・
と考えながら悶々とした日がしばらく続いていました。
確かに弦楽四重奏などは、奏でると言うより擦れる、響くと言うより鳴るという感じです。
そんな時に思いついたのがスピーカーのクロスオーバーの違いでした。タンノイもアルテックもユニットやエンクロージャー、方式の違いはあっても2Wayスピーカーです。
つまり、低音用スピーカーと高音用スピーカーはそれぞれ得意な音楽帯域を喧嘩することなく受け持って再生しています。
私のアルテック A7は、低音用スピーカー、高音用スピーカーの受け持っている音楽帯域(クロスオーバー周波数)が500Hzと低いためにクラシックを上手く再生できないのでは?
販売されているスピーカー(スピーカーシステム)は、スピーカー自体の特性(性能)や組み合わせるエンクロージャー(スピーカーボックス)によって低音用と高音用の最も良い境目、(クロスオーバー周波数)を決めます。
その境目を中心にしてそれぞれのスピーカーが相手の音を邪魔しないようにお互いの音量をデクレッシェンドしていきます。
タンノイの殆どのシステムはクロスオーバー周波数が1.100Hz(1.1kHz)に設定され、私のアルテック A7 の500Hzとは異なります。
しかし、同じA7 でも機種によっては、クロスオーバー周波数が、800Hz、1,200Hzの物もあり、500Hzと800Hz、1,200Hzでは高域のホーンの大きさが異なるもののそれ以外のスピーカーは同様です。
何とか私のA7 のクロスオーバー周波数をタンノイの1,100Hzに近い 1,200Hzに変えられないものだろうか?
アルテックと言っても若い方にはピント来ないかも知れませんので簡単にアルテックについて簡単に触れておきます。
CDなど考えることも出来なかった1970年代、アナログレコード全盛時代の憧れのスピーカーと言えば多くのマニアがアメリカのJBLやアルテック(ALTEC)に憧れていたと思います。
アルテックのスタートは、1937年に設立されたアルテックサービスが、1941年にランシング・マニュファクチャリング社(社長はジェーム・B・ランシング)を買収して社名を「アルテック・ランシング」とし、ランシングを技術担当副社長に迎えた時からとなります。
ランシングは副社長と言うより天才的な技術者で、多くの優れたスピーカーを開発し、中でも604ユニット、515ウーファー、288ドライバーなどは現在でも色褪せることがありません。
しかし、ランシングは、5年でアルテックを退職し1946年には自分の名前の頭文字を取った会社”JBL”を設立します。
ここでも優れた能力を発揮しますが・・・
いずれにしてもランシングがアルテックやJBLの基礎となるユニットを創り上げて、それが60年以上経った現在でも通用していることは驚くべきことです。
JBLもアルテックもランシングが開発した優れたユニットから成り立っている訳ですが、もう一つ共通点があります。それは殆どの製品が録音スタジオや映画館、劇場、ホールなどで使われることを前提の業務用であったと言うことです。
アルテックの製品の中で特に映画感や劇場用として1945年〜1955年位に開発・製造されたのが『ヴォイス・オブ・ザ・シアター』と呼ばれる A2、A4、A5、A7、A8 などです。
と言うことで本題に戻しますが、映画館や劇場で使われているA7なら偏りなくどんな音楽でも上手く再生できるだろうと思ったことが苦労のはじまりでした。
1月になると必ず思い出すことがあります。
もう10年も経ってしまいましたが、長年欲しかったALTEC A7が12月30日の夜に届き、元旦から3日まで音楽を聴きまくった事です。
高校時代に初めて見た時、いかにも無骨でプロ用スピーカーという形に圧倒されて憧れていたスピーカーを30年かけて入手出来たのですから本当に嬉しかったです。
しかし、頭の中では問題のない大きさだった A7も9畳程度の部屋に置くと大きくそして上手く再生するにはかなり無理があることに気づきました。
遠くで見ている分には目立たないものでも近くで見ると・・・
と同じ事が音にも言えそうです。
広い部屋で空間を空けて聴けば目立たなくても、狭い部屋で向き合って聴けばアラも目立つと言うことです。
雑誌や、オーディオ仲間からも「JBLならクラシックも聴けるがアルテックでは無理だ」等と言われていましたが、昔ジャズ喫茶で聴いた明るく、迫力があり実体感のある音でクラシックを聴いてみたいと思っていました。
しかし、
実際にはジャズやポップスは良いにしても、クラシックの弦楽器は300Bの真空管アンプで再生しても評判通り思う音が出てくれませんでした。
その時、「アルテックでクラシックを聴くぞ!」と心の中で決め、クラシック音楽が快く再生できるようチャレンジしていくことに決めたのです。