残念なお知らせです。
ダストカバーを新しくして2年数ヶ月を過ぎた頃から、アクリルの接着面(左の写真を参照下さい)に気泡や白い濁り?のようなものが出て来ました。
接着面以外は問題ありません。
早速「アクリ屋ドットコム」に画像を送り、確認した所、原因は不明で時間が経つとこのような症状が出ることがあるようです。
かなり個体差があり、もっと酷くなる場合もあるようでどうにもならないとの事でした。
強度や接着部分以外には問題がありませんが、気に入っていた美しいガラスエッジが経年変化でこのようになるとは・・・
本当に残念です。
写真は常用しているKENWOODのレコードプレーヤーKP-1100です。
早いもので発売から30年以上も経ってしまいましたが、販売台数も多かったためオークションなどでは現在でもやりとりされています。
私自身がこのプレーヤーの商品企画に携わっていたので、大切に使ってきたこともあり本体は大変綺麗です。
ダストカバーはアクリル製で、経年変化により黄ばみが出てきたり、擦り傷なども段々増え透明感も失われてきましたが、これだけではダストカバーの交換に踏み切らなかったと思います。
ダストカバーの開閉を担うヒンジが壊れてしまいました。
この部分が壊れるとダストカバーの開閉はできるもののダストカバーを開けたまま維持することが出来なくなり、全開にして手を離すとそのまま閉じてしまう状態になります。
こうなるとターンテーブルの上にレコードを載せるには、片手でダストカバーを開け、ダストカバーを持ったたまレコードをセットしなければなりません。
ヒンジ部分の交換が出来れば良いのですが、メーカーにも在庫は無く特殊なものなので、汎用のヒンジでは代用出来そうにありませんでした。
中古のプレーヤーのヒンジと交換しても樹脂部分は弱くまたダメになると思います。
いっそプレーヤーとダストカバーを結合しないで都度ダストカバーを載せることも考えましたが面倒くさがり屋の私には向きませんでした。
更にダストカバーで気になっていたことがあります。
コストダウンも含め、KENWOODのプレーヤーには同一のダストカバーが多く使われ、KP-1100も以前に作られた旧製品と同一のダストカバーを使用しています。
本来のダストカバーは埃から本体を守るため本体と同様のサイズで作られピッタリと合うはずですが、KP-1100 (KP-9010)、KP-990は、ダストカバーの方がプレーヤーのサイズより小さいため写真のように完全なダストカバーとは言えません。
たまたホームページを見ていたら「アクリ屋ドットコム」というページを見つけました。
横浜にある株式会社さくら樹脂という会社ですが、アクリル材料加工とアクリル製品を販売していて、プレーヤーのダストカバー製作も請け負ってくれるようでした。
とても綺麗なアクリルカバーだったので、ついつい見ていくとダストカバーにはステンレス製のヒンジも付いていることが分かりました。
親切なホームページで、欲しいダストカバーの色やサイズを入れると簡単に見積額まで表示してくれます。
アクリルの厚さは5mm共通で4色の中から選べます。
早速、プレーヤー全体をカバーしてくれるサイズを指定して約10日後に送られて来たダストカバーが下の写真です。
ガラスエッジという仕上げでお願いしたことでアクリルでは無くまるでガラス製のダストカバーに見えます。
ダストカバーのサイズを本体と同一にしたため写真のようにプレーヤー本体をカバーしてくれます。
また、背の高いスタビライザーを使用しても余裕のあるように高さを85mmとしました。
ヒンジも付きダストカバーも留まるようになりめでたしめでたしです。
交換したヒンジのお陰でダストカバーはしっかり留まります。
しかし5mm厚のアクリルは重いので、留まったところから手を添えて閉めないと急降下してしまいますので、
手をそえて最後までゆっくり閉めることのなりますが、綺麗になり大満足です。
以下、蛇足となりますが、
綺麗になったKP-1100でレコードを再生していると商品企画部に居た頃を思い出しました。
お世話になった設計技術担当の Iさん、Kさん、Tさん・・・
1982年にCD全盛時代となり、物量投入の大型プレーヤーでななく、コンパクトで高音質、10万円以下で買える『羊の皮を被った狼』と呼べる最後のアナログプレーヤーを目標にスタートしました。
このプレーヤーは羊の皮を脱ぎ狼の部分を全面に出すと、キャビネットを外した裸の状態となりスケルトンモデルなどと呼ばれて、音質的に最も良く、上級機であったL-07Dも凌ぐプレーヤーへと変身出来ますが、デザイナーのMさんが監修して完成した綺麗なフォルムは崩したくありません。
そもそもアルミダイキャスト製のユニファイドフレームは高音質化と羊の皮を上手く着るために作られているので裸のままではデザイン的に辛いものがあります。
やはり私は『羊の皮を被った狼』というコンセプトを大切にしたいので、常識となっている次の事柄に注意して
使用しています。
水平のチェック、アームの高さ調整、針圧調整、インサイドフォース・キャンセラーの調整、プレーヤー出力ケーブル、アース線の引き回しと確実な接続、良質電源の確保など。
また、決してお勧めしませんが、羊の皮は着たままで中身をより狼に近づけるため私自身のKP-1100に行っている事を書きました。(真似をされて事故や故障が起きても責任は持てません。)
・固く水平な台に乗せ本のインシュレーターでは高さ調整を行わず全て締め込んで使用しています。
また、インシュレーターと台の間に極く薄いゴム系の滑り止めを敷いてあり本体を押しても動きません。
(音に力感が出て音像の輪郭が明瞭になります。)
・感電防止目的の底板を外してあります。
(低域が下がりより開放的な音になります。)
・ターンテーブルを外すとスピンドル抜け防止のアルミカバーがタッピングネジ4本で留まっていますが、
このネジを外し、アルミカバーの裏の4角に、直径2mm位のブチルゴムを付け、ユニファイドフレーム
とアルミカバーが直接触れないようにして元に戻しネジを締めます。
(付帯音の軽減に効果があります。)
・電源トランスは本体から外し、プレーヤー設置台の上にジェルシートを敷きその上に置いています。
(S/Nがさらに向上し曲間等の静寂感が際立ちます。)
・こちらは好みがあると思いますが、ターンテーブルとターンテーブルシートの間にオヤイデ BR-ONE
というシートを敷いています。
(ターンテーブルの鳴きを更に協力に吸収してくれ、音の解像度が上がります。)
これだけでもかなり狼に近づくと思います。
また、購入時の状態でキャビネットに重しなどを載せ重量を稼ごうとする方がいらっしゃいます。
しかし、プレーヤーの構造上からは誤りで、折角ユニファイドフレームとキャビネットを浮かして振動源である電源トランスとアームを含めた駆動部を分離しているのに通常のプレーヤーのように一体構造に近づくため明らかにS/Nは劣化します。
重量を稼ぐならキャビネット側はそのままにして、ユニファイドフレーム側を重くしなくてはなりません。
最後に忘れられない思い出として、完成したKP-1100を故長岡 鉄男先生宅に持ち込んだ時に頂いた「これは良いね。良くできている。剛性も高いし価格も10万円を切っていて買いやすい。」 「中のアルミフレームはお金が掛かっているでしょう。音もしっかりとしていて価格以上の物でしょう。大きさもコンパクトでこれからのプレーヤーはこれ位が良いかも・・・」という言葉が思い出されます。
ダストカバーの交換だけを書くつもりでしたが、ダラダラと長くなってしまいました。
一つでも参考にして頂けることがあれば幸いです。