最近クラシック音楽がお好きなお客様から、「品切れすると何でこんなに入荷するまで時間がかかるの?」と質問をいただきました。
ご注文いただいたレコードはマイスキー&アルゲリッチ シューベルト『アルペジオーネ ソナタ』は音質・盤質・ジャケット共に素晴らしく、確か初回入荷から4〜5日後だったと思いますが、その時すでに品切れとなっていました。
このレコードは当時のPHILIPSが制作し、C&L Music(韓国)がユニバーサルと組んでレコードにしたものです。初回500セット(全部で5タイトル)の少量限定生産と言う通り初回プレス分が無くなった訳です。
このシリーズは、高音質で定評のあるドイツのパラス社(Pallas)にてレコードプレスを行うというこだわりもあったため時間がかかったものと思われます。
メーカー(製造元)は、在庫が無くなったからすぐに再プレスするわけではなく、今後の販売見通しや原盤使用権の期日やプレス会社のスケジュールなどにも影響されます。また、プレス会社はいろいろありますが、オリジナル盤以上のプレスができる会社は限られます。このため条件が整っても再プレスから入荷まで1ヶ月以上かかってしまうのす。
こんな事からも、購入される予定のある新譜レコードは予約されることをお薦めしますが、他にも理由があるのです。
見本盤(サンプル盤、白盤)は音が良いという事を聞かれたことはありませんか?
むかし勤めていたレコード会社で私も実際に経験しましたが、確かに後から発売される通常のレコードと見本盤を聴き比べると、全てとは言いませんが見本盤の方が新鮮な音がしました。
勿論、後から発売されているレコードの音が悪いと言っている訳ではありません。また、この差は音にこだわって注意深く聴いて比べた違いで全く気にされない方もいらっしゃる位の差なのです。
しかし、僅かな差でも気にするのが趣味の世界でありデジタルとは違うアナログの世界なのだと思います。
そこで、レコード盤を作るための行程を思い出してみました。かなり以前の記憶なので名前は間違っているかも知れませんが、行程は合っているはずです。
ラッカーマスター(凹盤)→ メタルマスター(凸盤)→ メタルマザー(凹盤)→ プレス用スタンパー(凸盤)
という4種類の盤が必要で、最後のプレス用スタンパー(表面用・裏面用の2枚の凸盤)の間にビニールを入れ、サンドイッチ状態にして熱と圧力でプレスしてレコード盤を作ります。
このプレス用スタンパーは繰り返しのプレスによって徐々に摩耗して行きます。何枚プレスさせるかはメーカーにより異なりますが、スタンパーの交換間際にプレスされた盤と早い時期にプレスされた盤とでは当然・・・
つまり、見本盤は通常販売されるレコード盤より前にプレスされるため、大きな差では無いにしても先程の音質の件もご理解頂けると思います。
コストや手間がかかるためプレス用スタンパーを頻繁に交換することは難しいと思います。また、再プレスだからといって必ず新しいスタンパーによってプレスされるとは限りません。
これらから、新譜のレコードを購入される場合は、予約をされてスタンパーの使用回数が少ない(プレス回数の少ない)初回盤をお薦めします。