店主の萩原です。ご覧いただきありがとうございます。
音楽とオーディオに対する情熱は40数年続いていますので、自分でも好きなんだナ〜と思います。
レコードやオーディオについて書いていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。
復刻盤を中心にアナログ レコードの販売を行っていますので、お客様から「オリジナル盤と復刻盤ではどちらが音が良いの?」と聞かれることがあります。
この『音が良い』と言う言葉は広義で、人それぞれで『音が良い』というポイントが異なるため慎重にお答えしています。
誤解の無いように私自身の持っている「オリジナル盤」と「復刻盤」の比較だけで言えば、殆どの場合は復刻盤の方がレンジが広くクリアーでステレオの場合セパレーション(音場感)が向上している盤が多いです。
でもこれは特性的なことで、「音が良い」というポイントから外れていることがあります。
例として左側のジャケット、ペギー リーが1953年に吹き込んだ名盤『ブラックコーヒー』で比較してみます。
オリジナル盤はDECCAの10インチ盤で、復刻盤はドイツに本拠を構えているSpeakers Corner Recordsがオリジナルのマスターテープを使用し、現在の最新の技術によりマスタリング、プレスを行い復刻販売しているものです。
ここからは私の主観と、再生装置による感想ですので、聴かれる方の好みや装置によって違いがあることをご理解下さい。
それでは、タイトル曲のブラックコーヒーについて聴いたままを書いてみます。
オリジナル盤は全体的にペギー リーの声にスポットを当てたような感じで、声が張り全面に出て来ています。
冒頭のベースのピチカート(G2)音やミュート・トランペットは中央で平面的に聴こえます。ペギー リーが歌っている音域(G3〜B♭4、周波数では約195Hz〜466Hz)の2〜3倍音にあたる1kHz〜1.5kHzあたりが僅かに強調されているようで、これが声に張りを与えているように感じます。
一方復刻盤の方は、最初のベースのピチカートから音が弾み、ペギー リーの声も強調されたところが無く自然で息遣いもリアルです。ベースの量感は明らかに復刻盤の方が豊です。モノラル盤ですが、トランペットとピアノの奥行き感がはっきりとしています。低域から高域まで強調感はなく自然です。
ペギー リーではこのような結果でしたが、他のオリジナル盤と復刻盤では異なる結果が出るかも知れません。
また、オリジナル盤はかなり再生されていますので、溝の減りや痛みもあると思います。
最初に戻りますが、聴かれる方が中域が僅かに持ち上がっているカマボコ型のような音が好みの方であれば、間違いなくオリジナル盤の方が『音が良い』と言われるはずです。
物理的な特性としては復刻盤の方が良いと思いますが、音質に関しては好みがあるため一概にこちらが『良い』とは言えません。
オリジナル盤の収集が目的でなく、レコード音楽を楽しむためと言うことであれば、個人的に復刻盤をお薦めします。
何故ならオリジナル盤は余りにも高価になってしまったからです。